冠婚

できれば人は長生きするのがよいのだな。
たくさんのことを見たり知ったりできるし
残される人たちも、寂しくても諦めがつくもの。
少し若く死んでしまうにしても
精一杯好きなことして死ぬのがいい。
たくさんわがまま言って、
やりたいことをやって。
その方が、自分にもよいし、
残された人が不憫に思う気持ちは軽くなる。
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ここ数ヶ月、ずっと考えている。
ぐるぐるぐるぐるぐる。
時々、あえて考えるのをやめる。
今はきっと人生で一番素敵な瞬間だ、と思う時。
そんな瞬間は滅多に訪れないことくらい、
この歳になればわかる。
だからそんな時は考えるのをやめる。
彼は何も恐れていないように見える。
私には怖いものがたくさんある。
人の感情を害すること。
親しい人を失うこと。
自分が傷つくこと。
彼の気持ちがいつか離れるのも怖い。
どこかへ行ってしまうかもしれないのも怖い。
いつまでこうして、ただ思い合っていられるんだろう、
と時々ふと考えてしまう。
でも先のことはわからない。
だからできるだけ、楽しいことだけ考えていたい。
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夫に別れたいと言って一ヶ月経つ。
夫は祖母の体調悪化を武器に、
私の口をつぐませた。
そして一切の話し合いもないまま、
これで離婚しなくていいだろ、とばかりに、
自分の行動の一切を改めた。
あれから夫は一度も、私の気持ちを逆なでするようなことをしていない。
だからとても快適に暮らしている。
夫は今や、良き同居人だ。
私は離婚を考えなおすべきなのかもしれない。
今まで3年間、毎日のように争いながらも、
一緒に暮らしてきた。
嫌なこともたくさんあったけれど、
もう愛も恋も何もないけれど、
家族として一度全て水に流して、
やり直すべきなのかもしれない。
でも忘れられない自分がいる。
触れ合うことすら許されない生活。
嘘をついて平気で約束をすっぽかすこと。
そして今回の、人が変わったような一ヶ月。
いくら泣いても喚いても一つも改善してくれなかったくせに、
離婚をつきつけられたら嘘のように改善した。
私への愛というよりは、
自分が不利益を被らないために改善したと受け取ってしまう。
ひねくれすぎだろうか。
私は子供すぎた。
愛も何もわからなかった。
今もほとんどわかっていない。