回復

激しい動揺の最中にいても
これが過ぎ去れば、また大丈夫になる、
と私は知っていた。
その思いが自分を支えた。
そして昼過ぎには友達に連絡して
自分の滑稽さを笑えるまでになった。
そして仕事へ行った。
余裕、余裕、と思っていたのに、
そうでもなかった。
というか、全然、ダメだった。
休憩の際にトイレへ避難し、
混乱を鎮めるため、自分の気持ちと向き合う。
胸がこんなにもざわざわするのは、なぜ?と。
自分の抱える感情を書き出す。
彼への未練、執着心、束縛欲、失望、怒り。
彼女への劣等感、嫉妬、罪悪感、卑屈な憧れ。
ああ、と納得する。
こんなにも多くの、苦痛を伴う感情を一度に抱えれば、
それは混乱し消耗するのも当然だ。
しかし私の感じているのは他人への思いばかり。
自分についてはどう感じているのだろう、
と改めて考えてみる。
私は結局、彼女のことも大切なのだ。
彼女はもしかしたら私に失望するかもしれないけれど、
私は彼女を尊重する気持ちを持っている。
だから罪悪感を感じることはない。
と思った。
波風立てたことを後悔しなくていい。
そしてただじっとして荒波が収まるのを待った。
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波が収まったのは、
彼と話した時だった。
彼は微笑んで何気ない感じで、
いつもと同じようなふうに
話しかけてきた。
少しはお前も動揺しろよ、
私が感じた混乱の欠片でもいいからお前も感じろよ、
というささやかな怒りとともに、
胸のざわめきは去っていった。
もういいや、と。
乗り越えた。