もうすっかり秋だ。
外を歩くときはマフラーと手袋が必須だし、
何より葉っぱが秋の色。
独逸の秋はとても美しい。
街並みが美しいから、というのが大きいと思う。
故郷の秋も美しい。
これは多分、公正な判断ではない。
ノスタルジーというやつで美しさが5割増しなんだと思う。
なんにしても、紅葉は綺麗。。。
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ああ。
胸がざわざわする。
帰国が迫っているからだろう。
一時帰国でさえ、ざわざわするのに。
本帰国となれば、一ヶ月以上先なのに、ざわざわ。
自分の生活の場を離れるというのは、大儀なことだ。
だから一時帰国はいつも、楽しみでいて、億劫でもあった。
一時的に帰ることは決まっているのだから、
楽しもう、と思って割り切ってはいても、
本当は、この地にしっかり根を下ろすため、
夫と二人で協力して家庭を作っていくためには、
一時的に帰ることをしないほうがいいのではと思っていた。
そういう部分も、気持ちの上での夫との大きな食い違いだった。
夫はいつ何時でも、自分の家族のもとに帰りたがったから。
二重生活だな、とよく思った。
親戚とか仕事とか母のこと、全ての煩わしことからの逃避だな、とも思った。
そんな生活ももうすぐ終わるんだなあ。
嬉しいとか悲しいとか、単純な言葉ではいいようのない気持ち。
ああ、ざわざわする。
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独逸は大抵のことにおいて、暮らしやすい国だった。
保守的で閉鎖的なこの地方の雰囲気を嫌う外国人は多いけど。
私も、嫌だなあと思うことは多々あったけど。
私が接した数少ない独逸人たちは皆、
誠実で、嘘が嫌いで、真面目な人たちだったかな。
最初は感じいいとは言い難くても、
仲が良くなるとものすごく優しい。
政治とか社会についてよく考えていて、
それについて率直に意見を言い合うのが好き。
私はよく自分の無知に気付かされた。
彼らのおかげで興味を持つようになることも多かった。
国の雰囲気としては、やはり保守的で静か。
特にこの地方はコンビニもほとんどないし、
夜遅くまでやっている店とかもないし、
日曜日は全て閉まる。
だから本当に静か。
時代に逆行しているよね、というのは友達との共通意見。
そのおかげで、家族との時間を大切にする人が多いのではないかと思うけど。
日曜日の独逸人ファミリーの基本行事は散歩だからなあ。
一家総出で、森の中を楽しそうにおしゃべりしながらゆっくり歩いているのを見ると、
良い時間の使い方だなと思う。
変な話、独逸での生活は夢の中にいたようだった。
こちらでの生活に少しは慣れたつもりでも、
日本に帰ると、いつも現実を感じる。
なんにしてもあと一ヶ月と少し。
あんまり考えないように、
でも大事なことはやり残さないように。