工事

少し日向ぼっこしようと思ったら、
いつもの工事のおじさんが庭に現れた。
二ヶ月くらい放置されていた、
ビニールシートの上の大量の土を何やらいじっている。
日向ぼっこは諦めた。
おじさんが働いている横でリラックスできる図太さがない。
おじさん、その土何に使うんですか。。?
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頭がグルグルする。
三日前の言い争いが尾を引いている。
同僚を家に呼んで焼肉をするので、
土曜の昼間にスーパーで買い物をしていた。
喧嘩のきっかけは夫の一言だった。
「主催者のくせに本当、何も考えてないね」
お?
主催者は私だけじゃなくて、あなたもでしょう。
私は今日までにどんな肉を焼くかとか、
他の料理はどうするとか考えて試作したり、
少しずつ平日にお酒とか買いだめたりしてたんですよ。一人で。
(夫には何一つ期待してないし相談もしていないし頼る気もさらさらないし)
突然の叱責に驚きをこらえて、
ちゃんと計画を立てていたことを冷静に説明するも、
夫の不満はより膨らむ。
「俺は働いてるの!せっかく焼肉するのに、準備するのも嫌いやだよね。なんでやらされてるーって思っちゃうかな。被害妄想。笑」
いやいやいや。やらされてるなんて思ってないですよ!ずっと楽しみにしていたし、準備も全然苦じゃなかったですよ。やってたよって説明しただけで。
「へー。だいたい、なんで平日に家にいるくせに、事前に食材を買わなかったのかな。うちは車もないのに今日だけじゃ持ちきれないじゃん!」
いやいやいや、今日無理なくもてるように、
平日に痛まないものは買っておいたよ。
と説明するも、聞く耳持たない。
買い物の間じゅう、口論。
結局、レジについた時ようやく、
買い物の量が大したことないことに気づいた夫。
私は腹の虫がおさまらず、よせばいいのに
「謝ったら許してあげるけど」
と冗談ぽく言ってみた。
すると、
「え?俺は悪くない」
と。
そこからだんだんエスカレートして、喧嘩に。
私はさっきのことを謝ってと言っているだけなのに、
夫は論点をすりかえて私を責め立てる。
「お前はネガティブで卑屈だ」
「お前はいつも偉そうだけどそんなに立派なのか」
「いつも権利ばかり主張して何もしていない」
「お前は社会に出てもやっていけない」
「家にいるくせに何もしないし」
「買い物もしないからいつも冷蔵庫は空っぽ」
「普通冷蔵庫は食べ物がいっぱい詰まっているものだ」
「ベーコンとか」
なんだなんだ?
私は全てに冷静に言い返した。
意味がわからない言いがかりには、
意味がわからないからわかるように言ってくれと頼んだ。
冷蔵庫の中身に関しては、怠け者だからというよりは、
好みの問題なのだ。
たくさん入っていたら奥が見えなくて食材をダメにするし、
食べたいものがあるなら言ってくれれば買っておくからと。
で、自分の思い込みで嫌なこと言ったら謝るべきじゃないかと。
すると、
「嫌なこと言ったから謝って〜なんて小学生みたい。笑」
とバカにした顔。
それはね、小学生以上になったら、
自分から謝れるように成長するからだよ。
私が小学生なんじゃなくて、
謝れないあなたが小学生なんだよ。
「ああ、そう。でも俺だったら別に気にしないもん」
でも良くない言い方だってのはわかるでしょう。
相手が気分を害したのも、わかってるでしょう。
そういう時は謝るもんだよ。
「すみません」
何この会話。
夫は意味不明なことばかり言うし、
私は正論のようなものばかり並べ立てる。
お互いに自分が勝つことだけを考えている。
こういう不毛なバトルのあと、夫は必ず偏頭痛を訴える。
私はしばらく心の消耗を感じる。
私が悪いのは、折れないことだ。
白黒つけるまで、自分の正しさを100%証明するまで折れない。
相手の間違いを許すとか。
言外の思いを読み取るとか。
ほどほどで引くとか。
そういうことをしてやれない。
夫は勘違いしてカッとしてしまっただけ。
それで、よく考えもせず口にしてしまっただけ。
「何も考えてない」と。
そのあとの言葉は全部、自分を正当化するための御託。
ただ、自分の非を認められないという病的な資質せいで、
くだらない御託を並べ立てただけ。
だからどの言葉も私には届かない。
正論を並べ立てる私の方がタチが悪い。
私がいったことは正しいだけに、
与えるダメージも大きかっただろう。
言葉を選んで、言われたことの1.5倍くらいはひどいことをいうようにしている。
小さいなあ私は。






夫をもう一度愛そうと思う前向きな気持ちはさらさらないけど、
ただ日々ができるだけ穏やかに過ぎていけばいいと思っている。