光
去年のこの月に実家を出た。
職場の近くに引っ越した。
当たり前のように母に手伝ってもらった。
いつも母と一緒だったからなぁ。
部屋にあるものぜんぶ母と揃えたんじゃないかってくらい。
その部屋を今日引っ越した。
初めての一人での引っ越しになるはずだった。
なんて淋しいんだろうと思っていた。
でも今回も一人にはならなかった。
彼がいてくれた。
*
こんなことになるとは思わなかった。
荷物を運び出したまっさらな部屋はまだ記憶に新しい。
去年の今頃、母といたのと同じ。
へんなの。
怖い。
残酷だ。
苦しい。
腹立つ。
悔しい。
*
私は阿呆で、昨日の夜までなに一つ準備をしていなかった。
昨日の夜も彼と彼の友達とごはんを食べに行ってしまった。
夜中に急いで準備をした。
手伝うよと言っていた彼は
眠りこけていた。
途中で起きて、私を見て
てきぱき動いてるの珍しいー笑
と馬鹿にしてまた寝た。
帰れと思った。
*
今朝も早起きしてまた準備をした。
彼もすごい手伝ってくれた。
間に合った。
外はすごく天気が良かった。
もう春だ。
空いた時間で川を見に行った。
水面がキラキラしていつもキレイなんだ。
今度スノーシューをはいて川べりを歩こうと約束した。
*
午後に彼の実家に連れてってもらった。
でっかい犬と陽気なご両親と歳の離れた弟がいた。
明るくてオープンで楽しくて自由で
思っていたとおりの感じだった。
みんな普段通りの姿で迎えてくれて
でもアホみたいに緊張した。
*
新しい生活が始まる。
やっと。
普通の暮らしができる。
ごはん作るし。
身なりも整えるし。
たくさん寝るし。
部屋も住みやすくするし。
友達に手紙も書く。
彼といろんなところに行く。
ご近所だから散歩もする。
悲しいことは考えないようにする。
考えても何も始まらない。
新しい生活を始める。