洛陽

一人で遠くへ行きたい。
彼に泥を浴びせるくらいなら、
一人で遠くへ行ってぜんぶ洗い流してしまいたい。
そして一人でいても、私はもう一人じゃない。
私がどこへ行っても、
彼はきっと心を痛めて私の帰りを待ってくれる。

彼が現れたのは全て済んだ後だった。
優しく手を握って
好きだと言ってくれた。
ずっと一緒にいたいと言ってくれた。
あの日は母の誕生日だった。
母は私が何を求めているか知っていた。
どんな風に人を愛したいか知っていた。
幸せを感じるほど、
母に彼を会わせたいと思う。
そして思い返す去年の記憶が悲惨な色を増す。
今の生活と去年のそれを比べると
悲鳴をあげたくなる。
怖かった。
私は一人だった。
本当に怖かった。
彼にいてほしかった。
そんなことを感じる私は本当に無力だ。
母を失って人生が変わった。
彼と出会ってまた人生が変わった。