假名
今日は納骨をした。
お経のあいだずっと目を閉じていた。
目を閉じていても日差しが眩しいくらい
あたたかくて心地よかった。
*
10年以上ぶりに父の兄や姉に会った。
二人ともすごく優しく穏やかな人たちだった。
本当に優しいんだ。
母も彼らを好きだった。
お父さんのことは考えなくていいから
自分の幸せのことだけ考えて
好きなように生きなさいと
優しく微笑みながら言われた。
あなたたちの幸せがお父さんの幸せなんだから、と。
海外でも国内でも
したいことがあればどこへでも行けばいいと。
*
彼の海外転勤が年内に決まった。
一緒に行くんだよ、といってくれる。
そんな生き方でいいだろうか。
何の目的もない。
ただ、今はそばにいたい。
母を亡くして生きる意味がなくなった。
母のために生きてきたわけじゃないけど。
一番大事な人だったから。
けどすぐに彼と出会った。
彼といると悲しいことを忘れていられた。
それが必要だったと思う。
目を逸らすことが。
もう誰とあっても平気なふりをできるし
バリバリ仕事もしている。
でもやはりどこか欠けている。
自分では平気な気でいるけど
周りは未だに腫れ物でも触るかのように扱う。
それが現実なんだと思う。
仕事中に考え込むのも
あまり人と話す気になれないのも
病的な嫉妬心も。
まだ立ち直れていない。
当たり前のことだ。
前は立ち直る気さえなかった。
何もかも自分が悪いのだから
一生罪を背負って静かに生きればいいと思っていた。
彼は私を何一つ責めない。
私も誰のことも責めたくないと思うようになった。
自分さえ。
好きなように生きなさいというなら、
何も迷わない。
引きこもっても仕方ないし
むしろ働きたい。
けど今は彼のそばにいたい。
向上心なんていらない。
難しいこと考えずにぼうっとしていたい。
*
実際、父のことはあまり心配していない。
母のことはいつも心配だったけれど。
母は寂しがりやだったから。
スカイプがあればなんとかなるだろう。
ハガキもたくさん書こう。