嗚咽をもらしながら卵焼きを切り
何やってるんだろうとぼんやり思った。
女々しいというよりは幼稚な涙。
考えて混乱してもてあまして
あと何回進歩のない繰り返しを重ねるんだろう。
そして結局考えるのをやめるんだ。
答えを見つけたいけど見つからない。
全然見つからない。

* *
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車を走らせながら
不公平だと思った。
ひどい仕打ちだと思った。
世の中が不公平だなんて
よくわかっているけれど
受け入れがたいと思った。
そして
置いていかれるのが嫌なら
一緒に行けばいいのではないかと思った。
そうすれば悲しくない。寂しくない。
そしてまた涙が出た。
そんなことできるはずがない。
生きていたい。
生きていかなきゃいけない。
だからつらいんじゃないか。
くだらない気休めを思いつく自分が情けない。

* *
* * *
* *

夜、母に電話をした。
明るく元気そうな声を聞いて
もやもやがとけていった。
天ぷらを作っていると。
これから生姜の甘酢漬けを作ると。
もっと頼ってほしいなんて口先ばかり。
頼っているのはいつもこちらのほうだ。
たった一日現実と向き合っただけで
取り乱して心は平静を失う。
頼りがいがないから頼れないのではないか。
寄りかかったらもろとも倒れてしまいそうだから
寄りかかれないのではないか。
そう知った。
だから強くなりたい。
強くなろうと決めた。
私は愚か者だから
明日もきっと泣くんだろう。
一人でめそめそするんだろう。
けどそれでも少しずつでも
強くならなきゃいけない。
苦しいのは私じゃないんだから。